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四年目温故知新

Web編集を終えた。とりあえず店の門戸として制作した月日から丸三年。のらりくらりと、また気持ち新たに。3年間の営業を続けての改善点や、新しく伝えたいことを纏め直す。5年先・10年先、30年先を見据え、旅人を迎える宿として初心忘れるべからず。

三歳だった娘も、七歳を目前に、彼女の筆跡が家族の温かみを表現してくれることに気づき、小さなデザイナーによるロゴも見事完成。残しておきたい宝物を残すことができた。

【不安と不格好さが、糧になるとき】

はじまりはいつも唐突で。予定や計画を待っていたら、何年かかっても土螢はオープンしなかったと思う。自分がやりたいこと、やっていきたいことと裏腹に、実生活は小さな娘に翻弄される新米母。宿、ましてや、居住を共にするという新しい形の暮らし方は未知数でしかあらず。家の設計や暮らしの計画図を練りに練って完成して我が家ではあるが、理想郷とは程遠い暮らしのなかでの始まり。

沢山の力を使って静かにひっそりとオープンした。家具や建具は、わたしたちの自慢。城里町にある加藤木工さんに依頼した。信頼と正確さで、土螢の規格外の巨大な大窓建具を製作。重厚感のある鉄媒染で染めたダイニングテーブルは旅人たちとの雑談をいつも静かに見守ってくれている。

宿と言えど一番長い時間を過ごすのは、寝具の中だと考えた。一番肌に近い存在は寝間着であり、湯上がりにシャリッとした質感で、着るほどに肌に馴染んでいくリネンでパジャマを製作したのは、常陸大宮市にあるリネンを使用した作家toiroさん。

食に自信がなかった時、一息心を落ち着かせる食べ物はないものかと、頼りにしたのが菓子作家のcayaさん。茨城の恵みを、ぱくっと一口で。沢山の旅人たちへ、おひとつどうぞと一緒に茶を共にした。

本当にありがたいことに、さまざまな旅人たちと出逢えた3年間は、何もなかったこの地に種を撒き根を生やしてくれた。

土螢は旅へ行こうと宿を探しに探した旅人たちの宿場。中々そう簡単には見つけることはあらず、旅人たちの貪欲な探究心によってこの宿を見つけてくれているということ。

本当に見つけてくださって、ありがとう。

右も左もわからない不安は自分の中にある迷いのようなものでもある。現実にはあまり関係のないことだったりもする。視界の見えない未知数の感覚は、真面目に生きているが故に、ずっしりと感じられる体験。

この宿をはじめるときに、笠間にある器のお店、陶器林さんに沢山世話になった。”やってみなよ。大丈夫なんとかなるから。”と店主の林さんは私に一冊の本を手渡してくれた。

大坊珈琲の時間/大坊勝次・キムホノ著

この本を何度も何度も読んだ。思いのある名店は月日を味方にし、こだわりをじっと変えず。時として斬新な一歩を歩む。

生きる時間は淡々と日々流れるのだけれど、どうありたいかはいつだって真ん中にあって。どうにでもなれるということを、何もなかった私に三年の歳月が教えてくれている。

種は蒔いたばかり。四年目にして自作の暖簾を下げはじめた。これからくぐる旅人へ、またここへ戻りにくる旅人へ。

#暮らしと旅 #水戸の宿 #土螢

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