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梅螢美しき頃に

庭に真っ白な紫陽花が咲き誇る頃、私にとって大切な一日がやってくる。5年前の今日、私は第二子の可愛い男の子を出産しました。

この話を綴ることが出来るようになるまで、言葉に出せるようになるまで、随分と長い時間がかかったように思う。母としての葛藤、私としての生き方、いろんなことを沢山噛み締めて今日に至ります。

私の中での生死観を変えたことは人生の中でも数回ありますが、死産として産まれた彼の誕生は衝撃を与えました。あの日まで鼓動を感じていたけれど、小さな体で何かを私に置いて行った彼には一生かけて感謝を伝えていきたいと思わせてくれる存在です。

毎日休むことのない子育て、日々の予定生き急ぐような時間、止まることを知らず、何か足りない日々。まやかしのように、忙しく過ごす毎日に終止符を打とうと思ったのも、彼のお陰様。

彼の命と引き継ぐように、ここ土螢は芽吹きました。この宿を試行錯誤どんな場所にするかを日々考えて、真剣な時間【馬鹿真面目にときを過ごす】ことを大切にすると決めたあの日。この5年でこの場所も随分心地よい居場所となりました。

はじめましての旅人は緊張するものの、精一杯おかえりなさいと心の中で唱えて、どうかゆっくり休んでいってね。といつも想っています。わたしから溢れ出る母性のような感情は、彼が残してくれた置き土産のようなものでしょうね。

日が変わる頃にはゆっくりと心と身体を休めてもらう。日頃言わない目標やどこへ向かって走っているのか、会話の中で足元を見てもらう。正解や間違い探しではなく、自分はどうありたいのか、どうしたいのか。を共に話し合っていくひととき。もちろん堅苦しい場面はほとんどなく、皆自然なメロディの中言葉を伝え合う。じっくりと言葉にする。

そんなことを意識するうちに、数々の旅人たちが夢や目標を叶えたり、忘れていた気持ちを思い出したり。そしてまた気さくに話に来てくれることが、有難く喜びだったりします。

話し合う中で私は何がしたいだろう?とまた新しい道を模索する自分がいることにもずっと昔から気づいていました。何度も目標の中に登場する”手仕事”という世界観。私の両祖母、そして結婚して姓が変わり主人の祖母の歴史にも和裁と洋裁の手仕事は必ずと言って良いほど身近なものでした。全員が衣に携わる仕事をしている共通点がありました。

便利な世の中になって物の飽和する世代に産まれ生きているわたしたち。便利と引き換えに時間を手に入れているはずなのにどこか寂しげな現代人。

私は手間をかけ時間をかけるこの手仕事という世界にどうしても歩み進んでみたくて、私である私らしい作品作りを続けていくことを決めました。

ものづくりはかれこれ8年娘が産まれた時からこつこつと続けていて、今までは娘の服を毎年1着は作ると子育ての傍ら、ちくちく針を進めたものです。

今はご縁あって、古布や着物の再生を中心に扱うようになりました。布一つとっても貴重だったあの頃を手にとるように教えてくれる古い布たちには、故人の生きた道が反映されているように思います。

衣食住全てに携わってみる、自分の人生しか歩めないわたしの道を常に意識し日々に感謝して歩むこと。

ダンテの残した言葉にこんな詩があります。

【汝は汝の道をゆけ。そして人々にはその言うにまかせよ】人がなにかと言うがそれは相手の問題。自分の人生は自らが作る。わたしの道を進むこと。

土螢に来る旅人たちが、日々抱く心の感情を解き放ってくれることは、まさしくこの詩のとおりで、皆の道を大丈夫だよと背中を押すことができるのは、私自身が自分に対して真っ直ぐにそしてやりたいことを諦めずに続けた経験があるから。

そして、その続けるの土台には私の中にある生死観が今を生きてと日々背中を押してくれるということ。生きるという時間には、誰しも必ず限りがあります。この世で生きた証を持って行こうにも、死にゆく時には何も持って行くことができないこと。ただ生前にどんな生き方をしてどうあったかは私たちの心の中に留まり続けることができる。この生きゆく時間、どんな過ごし方をするかは皆それぞれ、わたしたち次第。

死に際にああしておけばよかった。と思うことがない生き方をすること、感謝は耳に鱆が出来るほど毎日伝えること、今日も幸せだったと振り返って眠りにつくこと。わたしが毎日実践していることです。

だからこそ、わたしの声はわたしがよく聴こえるようになったんだと思います。

【わたしの生きる道筋】

・土螢を続け門戸をひらく、出逢いを温める

・子の成長を心から楽しむ、本質を忘れない子育て親育ち自分育ちをする

・家族との日常をかけがえのないものにする、忙しさに心が奪われない振り回されない

・命あり、命産み出す作品を作る。充実した仕事。暮らしに責任を持つ。

・目を閉じるそときまで、感謝する。

土螢の手仕事情報や詳細は追って、発表していきます。

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